次男ムーン、
パニックになると、そりかえる。
筋肉が突っ張って、体がうまく動かない。
パニックになる、きっかけも。
本人にとっては、重要なことでも。
回りから見ると、どうでもいいこと。
バカにされてる、と勝手に思って。
スイッチが入ると、パニックになる。
「おちる、おちる」
「立てん、立てん」
「痛い、痛い」
などと、言いながら、体を突っ張らせる。
兄弟たちからみると、嫌なことから逃げるため、
わざと、やってるようにしか見えない。
母ちゃんだって、どう理解していいか。
とても困っている。
受け入れて、寄り添おうと、頑張るが。
腹が立つこと、この上ない。
それを、グッと我慢して。
大丈夫、大丈夫。
無理なときは、動かなくていいから。
大丈夫。
と、背中をさする。
でも、すぐには落ち着かない。
だから、しばらく体をさすって、
そのあと、放っておく。
すると、いつの間にか動き出す。
でも、ある日突然。
パニックと同時に、呼吸がおかしかった。
短く息を切って、呼吸している。
過呼吸みたいに。
こういうとき、どうすればいいんだっけ?
深呼吸?
そう、深呼吸するときは、
とにかく息を吐ききる。
吐けばいいんだ。
ムーン、息を吐いて。
吐いたら、空気は自然に入ってくる。
しっかり、吐くことを意識して。
そうしてるうち、落ち着く。
ああ、良かった。
何度か、そんなことがあったあと。
はぶてて、部屋を飛び出すことがあった。
隣の部屋から、わざとらしい、
短い呼吸音が、聞こえてきた。
辛そうな感じが、少しもしない。
すぐに、様子を見に行った。
布団をかぶった、ムーンの体。
布団をはがして、覗きこむ。
わざとでしょう?
と、聞くと。ニヤリ、と、笑う。
頭をなでて、しばらく、一緒にいた。
来てほしかったの?
聞くと、うなずく。
その頭を、なでる。
なんだかもう、とうぶん、
過呼吸にならない気がした。
ムーンに寄り添うのは、本当に難しい。
それでも、母さんを見て、
嬉しそうに笑う、ムーンは、かわいい。
かわいいって思えたとき、
ふっと、ムーンの心と、
本当に寄り添えてる気がする。
パニックになったときの、対処より。
本当は、日常の些細なやりとりの積み重ねが、
大事なのかもしれない。