長男ハート、16歳。
彼の世界は、閉じている。
中学を卒業して、行く場所がない。
自分に価値を見いだせなくて、
誰とも会う気がしない。
特定の友達とは、外出する。
欲しい物があれば、買い物には出る。
でも、安心できる人以外と出会ったら、
会話するのに、困ってしまう。
返答する言葉に、詰まってしまう。
不安から、日中は、寝てることが多い。
不規則に活動するから、
お腹が空くのも不規則。
食事は用意するけど、
冷蔵庫をあさって、勝手に食べてもらう。
気分じゃない。
お腹が空いてない。
お腹すいた。
何かない?
最近、食べ物の会話しかしてないかも。
そんなハートがご飯を食べているときに、
隣の子が、遊びに来た。
弟たちと、同級生の子だ。
とっても人懐っこくて、
ハートも、中学1年生までは、
一緒に遊んでいた。
中2ころから、同級生としか、
遊ばなくなっていたが。
久しぶりに、遊んだら?
ハートに言うと、予想通り。
絶対嫌だ。
男の子たちの遊びのルールは、
基本は外遊び。
家の中では、何をしでかすか。
だから、一緒に遊ぶとは、
外で遊ぶってこと。
だから、予想通り。
外で遊んだら、隣の親と、会話するかも。
そしたら、どう答えていいか。困る。
絶対、外では遊べない。
違うよ。
中で、ゲームしたらってこと。
うーん。ゲームなら。
まぁ、いいかも。
いつもなら、外へ追い出すけど。
このチャンスを、逃してなるものか。
隣の子を、誘い。
みんなで、マリオカートで勝負。
仕切りは、ハート。
ハートは、バランス感覚がとてもよい。
不公平にならないよう、順番を決める。
久しぶりに、一緒に遊んだ。
閉じていく世界が、
ほんの少し、人を受け入れた。
できないことなんて、しなくていい。
できることを、拾い出しながら。
閉じていく世界を。
ほんの少し、広げながら。
そのうち、何かが。
外へ出る、きっかけになればいい。