家から小学校まで、歩いて10分かからないくらい。近いといえば、近いけど。歩くのは、ちょっと、めんどくさい距離?
天気もいいし、車のガソリンが、残り少なくて。まぁ、歩いて行くか、と。末っ子ライト、小学5年生。児童館へのお迎えを、歩いて行った。
それが、間違ってたんだよ、と、末っ子ライトは、言う。
歩きたくない。ランドセル持ちたくない。文句ばっかり。末っ子ライト。ランドセル持ってよ。
そういえば、低学年の頃。歩いて登校班で下校するときは、しょっちゅう。ランドセルを、お兄ちゃんに持ってもらっていた。僕疲れて歩けないよ、と、駄々をこねて。
だから、ライトの言葉を無視して。学校を出てすぐにある、歩道橋の上で座り込む、ライトをおいて先に行った。
しばらくして、軽やかな足音が、後ろから追いかけてきた。
母ちゃん、先に帰るね。
そう言って追い越していく、ライトの背中に、ランドセルは。
ないっ!!
置いて行ったら、母さんが取りに行ってくれる、と、高を括っているのだ。腹が立つ。
だから、母さんは、引き返し。ランドセルを持つと、学校へ向かった。
学校で、先生に事情を話し、ランドセルを学校で預かってもらうことにした。近所の人が見つけて、学校へ届けてくれたことにしてもらい、母さんは、素知らぬ顔で家に帰った。
ライト、ランドセルなかったよ?
ウソ?だって僕、歩道橋の上の隅っこに、ちゃんと置いたよ?見てくれた?本当になかった?
なかったよ。
見に行ってくる!!
ライト、家を飛び出して、探しに行った。でも、ないことを知ってる母ちゃんは、ライトが一人で泣くことにならないか、心配。でも、突き放した母ちゃんが行って、甘やかす訳にはいかない。
そこで、中2の次男ムーンに頼んだ。事情は話さず、ライトがランドセルを探しに行ってることだけを伝えて、自転車で様子を見に行ってもらった。
しばらくして、ライトが走って帰ってきた。
母ちゃん、ランドセルがない。探してもない。どうしよう?
困ったねぇ、どうしようか。
もう僕、明日から学校へ行かない!!
自転車で、後から帰って来たムーンが、ふと、言った。
もしかしたら、学校へ届いてるかもしれないよ。一緒に行ってみようよ。
でも、ショックで落ち込みすぎているライトは、動くことができない。
母さんは、かわいそうに思っても、突き放した以上は、ここで、甘い顔はできない。
じゃあ、僕が行ってみてあげるよ。
優しいムーンは、落ち込んでるライトのかわりに、学校に行ってくれた。そして、地域の人が見つけて、学校に届けてくれたランドセルを、持って帰ってくれた。
ムーンは、久しぶりに小学校の先生と話せて、ごきげんだった。
ライトは、ムーンに感謝して、自分のおやつを、ムーンにあげていた。
この度は、学校を巻き込んでの親子喧嘩になってしまったが、次男のムーンがうまく間に入ってくれて、まるくおさまることができた。本当に良かった。
ムーンに感謝の、ランドセル事件だった。