母ちゃん
長男ハートに呼ばれて、返事をする。
どこ??
トイレ
と言うと、安心したような気配がする。
長男ハート、中学1年生は、左の耳が聞こえない。だから、声が聞こえても、どこから聞こえてきたかが、分からない。
聞こえなくなったのは、小学校1年生の時。
突然、左耳の聴力がなくなった。
当時はまだ、家のなかに母親の気配を感じながら、安心して過ごせる時期。
だから、常に。
母ちゃんどこ?
と、問いかけ続けていた。
そのたび、声がどこから聞こえるのかが分からないハートが、かわいそうで、しかたがなかった。
成長とともに、居場所を聞かれることも減ってきた。
それが、久しぶりに聞かれて、1年生の頃を思いだした。
成長しても、やっぱり。誰がどこに行ったか、不安になることがある。声だけで、家のどこにいるか、見当がつかないからこそ。
どこ?
と、聞く。
その問いかけが、母ちゃんには、少し、切ない。