暖かくなってきた。生き物も、活動を始めた。てんとう虫を見つけた。子どもたちも、アミを振り回すようになった。
久しぶりに、溝で、小さな魚を、捕まえてきた。水槽を洗って、ブクブクをセットして、気がつけば、手伝わなくても。自分でちゃっちゃと準備していく。もうすぐ中学生の長男ハート。
しばらく、別の遊びで走り回っていたと思ったら。また、アミを持って、溝に出掛けて行った。
見に行ってみると、いつものヌマエビは、たくさんいる。その中に、小さな、まだ色の白っぽいザリガニが1匹。
逃がせって言ったんだけどね。ライトが飼いたいんだって。
と、長男ハート。
ハートはあんまり、ザリガニが好きではない。食欲旺盛で、雑食で、何でも食べて、共食いまでするザリガニ。何度か飼ったことはあるが。他の生物と一緒には入れられないし、水槽は増えるしで、結局、逃がすことが多い。
末っ子ライトは、昨年夏から、子どものザリガニを1匹飼っている。薄い茶色だった体も、脱皮を繰り返し、濃い茶色になってきた。赤くなったら、立派な大人だ。
冬の間は、静かにしていたが。暖かくなってきて、活発に動くようになった。
その、倍以上も小さい体。小さいザリガニ。
一緒にしたら、食べられちゃうね。水槽あるかな?
と、言うと。ハートも。
多分、大丈夫。探してみる。
そして、帰って、とりあえず。ヌマエビとザリガニをほったらかして、明るいうちに外を走り回る、長男ハート。
家の中には、末っ子ライトと、次男ムーン。
ふと、見ると。水槽の中に、ザリガニがいない。
聞くと、ムーンが教えてくれた。
ライトが、ザリガニの水槽に入れて、戦わせてたら、ハサミ振って戦ってたけど、背中見せたとたん、食べられちゃったんだよ。
いや、それは、共食いをすると、知ってるムーンの見た世界で。知らなかったライトは、きっとこう。
お友達だよーって、水槽に入れたら。ハサミ振って挨拶してたのに。喜んでくれると思ったのに。がぶって食べちゃった。
声をかけると、しくしく、泣き始めた。
だって、知らなかったんだもん。
そして、怒って、
何でムーン、教えてくれなかったの!!
ムーンも怒って、
何で、僕のせいにするの!!知らないなんて、思わなかったんだもん。あーっ!!腹が立ってきた、もう、遊ばない!!
なんて、言うから。外から聞いていた、事情を知らないハートが怒って。
とにかく、外に出てこい!!説明しろ!!
何で遊ぶにしろ、一人じゃ面白くなくて、なかなか出てこない二人に、怒り始めた。
事情を話すと、面倒をみてやる気になってたハートも、ちょっとショック。でも、ライトのことを考え、反省してるなら、仕方がないか、と、言ってた。
でも、何でそれで、外で遊べないか、ムーンのことだけは、理解不能なハート。再び、ムーンに怒り狂い、とりあえず出てきて説明しろ!!
まあ、それは、好きに喧嘩してよ。
去年の夏、熱心に、ザリガニの本を読んでいたはずのライト。それでも半分、ファンタジーに生きるてる時代なんだよね、まだ。ザリガニに夢を見てて、都合の悪いことは、記憶から抜け落ちちゃってる。友達を作ってあげるよって、声をかけたり、してたんだろうな。
また、ゆっくり声をかけると。
同じ大きさなら、一緒に飼えるかな?
もっと大きな水槽で、十分な餌をあげてたら、二匹程度なら、大丈夫と思うよ。
まだ、諦めてなかったようだ。