川原の薮の中には、たくさんの鳥がいる。
キジのオスは、きれいで目立つから、すぐわかる。ウグイスの鳴き声も、特徴的だ。スズメは、そこら中に集団でいる、身近な鳥だ。その他、名前も知らない鳥たち。
ヒナが、怪我をしている。
春は、子育ての季節。初夏は巣立ちの季節。
ある日、隣の子が道の途中で、怪我をしている鳥のヒナを見つけた。毛が羽毛に包まれている。車に引かれてはいけないから、人の匂いをつけないよう、軍手をしてそっと塀の上へ置いた。
親鳥が近くにいた。ヒナが鳴くと、応えて鳴く。人間がヒナに近づくと、ジッと鳴いて、威嚇する。
鳥の図鑑を開き、似ている鳥を探した。スズメ、ツバメ、ホオジロ、メジロ。ユーチューブの動画も合わせて見て、ホオジロだと分かった。ヒナは、巣立ちの頃。親鳥に見守られながら巣を出て、怪我をしたようだ。
どうしたら、助けてあげれるかなぁ。
子どもたちが、心配そうに見守る。
自然は、怪我をしたヒナに優しくはない。本当に助けたかったら、連れて帰って育てるしかない。だけど、きっと、生き餌しか食べないだろうから、親と同じに世話をして育てるのは、不可能だ。それに、生きる術は、教えることができない。一時の感情で、連れ帰ることはできない。
次の日の朝、塀の上にヒナはいなかったが、まだ、ヒナの鳴き声は聞こえていた。親も木の上に止まって、応えていた。
夕方、ヒナの鳴き声はなかった。親だけはまだ、木の上で鳴き続けていた。
数日後、もう親もいなかった。
助かってたらいいね。助かっててほしいね。
子どもたちは、そう言っていたけど。
そこはまぁ、見えない部分なので、希望を持ちつつ。でも、難しいことは、子どもでも知っているだろう。