僕ね、勇者になりたかったの。
でもね、悪者はいないんだよ。
なれないって、気づいたんだ。
末っ子ライト、小学5年生。
そんなことを、言ったのは、去年のこと。
そして今、作っているのが勇者の剣。
100円ショップのやわらかい木を、
彫刻刀や石で形を整え、作っている。
勇者になりたかったことが、
まわりに知れ渡り。
もう、隠そうともしないで。
作った剣で、技を磨き続けている。
なれない勇者になるべく。
泥棒に会っても、これで大丈夫。
って。
大丈夫じゃないから、
全力で逃げてください。
勇者になるなら、
空手をもっと、頑張ったら?
剣を使わないから、ちょっと。
なら、剣道をやってみる?
ぼく、木刀がいいのよ。
変なががさしたの、嫌なの。
竹刀が、嫌なのね。
なら、剣道の形は?
ん?ちょっと違う。
うーん、スタントとか、
時代劇の殺陣とか。
自作の剣を、振り回し。
中2のムーンも、付き合ってる。
お隣の同級生も。
小5と中2の男の子。
4人そろって、棒を振り回し、
チャンバラが始まる。
男の子って、いくつになっても。
本当に、子どもです。