ストレスが、たまってるのかも。
次男ムーン、中学2年生。
言い出したら、絶対に自分の言い分を曲げない。ひとつのことに囚われたら、そこから離れられない。気持ちが切り替わりにくい、性格だ。兄弟げんかの時も。
長男ハート、16歳。
ハートが中学生の頃は、友だちと遊ぶのが忙しく。弟たちなんて、相手にしてなかった。ケンカするのはいつも、次男ムーンと末っ子ライト。
でもハート、高校へ進学しない選択をした。平日は友だちと会うことがなく、人と会わずに生活したいと言いながら、人に飢えていて、弟とよく遊ぶようになった。自覚していないとは、思うけど。
そんなわけで、長男ハート。弟と関わることが増え、当然、ケンカも増えた。一方的に、やり込めるのだが。
そんなある日、ハートとケンカした末っ子ライトが、大号泣した。
基本、子供のケンカの仲裁は、しないことにしている。でも、様子を見て間には入る。
長男ハート、小学3年生の頃、家族に対する暴力行為があった。当時弟は、小学1年生と年少さん。1年差でも、身長差のある時期だ。大きな兄が暴れる姿は、弟たちの記憶に、刷り込まれている。ハートにとっては、腹が立ったからちょっと叩いた、でも、弟たちには、当時の記憶が蘇り、ひどい恐怖になる。
間に入って、ライトを慰めつつ、ハートと向き合う。
ケンカをしても、叩くことは、絶対にダメ。と、静かに、でも、はっきり伝えると。得意の理屈で、自分の正当性を訴えてくる。伝えたいことは、短く、はっきりと。譲らず、叩いてはいけないと言い続けるが。思春期の難しさなのか。自分の理屈の正しさのみを言いつのり、自分が悪いことを認めず、勝ち逃げと言わんばかりに、さっさと自分の部屋へと引っ込んだ。
家事の忙しい夕方。ライトの頭を撫でて、夕飯の準備に戻ると。
今度は、次男ムーンと末っ子ライトがケンカをして、ライトがまた、号泣した。
この二人のケンカ、仲裁に入ろうにも、本当に訳が分からない。だから普段は、ほっとくけど。さすがに、ライト、2度目の号泣だから、家事の手を止めた。夕飯は諦めた。
間に入り、ライトを慰めつつ、兄ムーンの背をさすりながら、話を聞く。意味不明だが、否定せず、そうだね、そうだねと、聞いてやる。すると、最後の最後に、ボソリと、行った。
たしかに僕、ストレスたまっているのかも。学校で、授業ができないくらい、騒がしいことが多くて、ストレスたまっているのかも。そのストレスを、ライトにぶつけているのかも。
ケンカではいつも、ライトが悪い、僕は悪くない、としか言ったことのないムーンが。初めて、自分と向き合う言葉を言った。
びっくりして、そして、ジーンと、感動しました。
そうだね、ムーンも、大変なんだよね。
そして、しばらくムーンをなでて、ライトの様子を確認して、頭をなでて。
あわてて、諦めた夕飯作り。
いつもより、かなり遅くはなったが。それ以上の、収穫があった。
本当は、ケンカ勃発の前に、子どもと寄り添う時間が必要なのかもしれない。